天穂のサクナヒメをプレイして体調を崩した

ゲームに狂わされる

面白いけど、面白すぎず、面白いゲームに出会うと狂ったようにプレイしてしまう。天穂のサクナヒメがそうだった。ヘドが出るほどプレイしてしまった。

週末に購入して深夜までプレイ、土日も起きてから肉体と精神に限界がくるまでプレイしてしまった。中毒性のあるゲームには猿に変えられてしまう。もともと猿みたいなものだがその気が一層酷くなる。でもそうなっている本人は幸福の最中に居る。過去の未来もなく目の前のレバーを引き続ける。

2つのパート

天穂のサクナヒメは稲作パートと2Dアクションパートの両パートから成っている。2Dアクションパートには新鮮味は無いがやってみると楽しい。うまく操作すればコンボが繋がるし、適度に集中していないとすぐに殺されてしまう。湯加減がちょうど良くて死んでもすぐにやり直そうという気持ちになれる。隠しアイテムもあってそこに辿り着くためには少し頭を働かせなければならない。アクション一辺倒にならない構成になっている。

だがこの良くできた2Dアクションパートだけであったらここまでドハマリすることはなかっただろう。稲作パートがあっての2Dアクションなのだ。

稲作パートは現実での稲作の流れを踏襲している。種籾の選別から始まり、田起こし、田植え、水量の調整、肥料の調整、出穂、稲刈り、日干し、脱穀、精米、と米を得るまでの過程の全てがゲーム内に再現されている。

良い稲を育てるための直接的な指示は与えられない。田植えの時期は、水量の調整は、肥料の与え方は、雑草害を防ぐには、自分で考えなければならない。どうすれば良いのかはヒントとして与えられるが、手とり足取り教えてくれるわけではなく、”中干し”や”分けつ”といった専門用語が散りばめられた文献として与えられるだけで、最初に見た時には全く意味が分からない。だが良い稲を育てようという気持ちさえあれば、それらが徐々に意味を成してくる。

初めは一つ一つの過程をおっかなびっくりに作業することになるが、年を経るにつれて稲の様子が分かるようになってくる。田植えの良いタイミング、時期による水量の調整、3種の肥料の意味、雑草が生えやすい時期、中干し・出穂のタイミング、そして稲刈りの前の水抜き。プレイするほど稲作の流れが身体に染み込んでいくのだ。

2Dアクションパートと稲作パートが互いに補完しあっている。アクションで疲れたら稲作、稲作の情報量に疲れたらアクション、身体を動かしたら頭を、頭を動かしたら身体を動かす。アクションで詰まったら稲作をすればステータスがアップするし、稲作に飽きたらステージで宝探しをすれば良い。ゲーム進行のどの場面でもやることが尽きないように気が配られていた。

ゲームをプレイしている最中、常に快楽があった。アクションの快楽はわかりやすいだろう。敵を倒して爽快、アイテムを見つけて嬉しい、ボスを倒して達成感、それに尽きる。一方で稲作パートは一つ一つの作業が面倒だが自分でやると達成感がある。1年の細々とした面倒な作業をすべて終えた後には念願の米が収穫できる。このときの感動はひとしおだった。米作りの各過程で自分のしていた気配りが米の評価として現れる。それと同時に主人公サクナヒメのステータスも上昇する。米が手に入って毎回の食事の献立で悩む必要もなくなり安心する。このゲームはあの瞬間、米を収穫したときの時のために作られたのだと個人的には思った。

ストーリーとキャラクター

天穂のサクナヒメはストーリーもキャラクターも良かった。稲作パートの面倒な作業をやるだけのモチベーションを維持してくれた。仲間キャラクターはたくさんいたけれども、特に嫌いになる奴は居なかったし皆一様に好きになれた。ストーリーも巨悪を倒す話なので非常に分かりやすい。あくまでもこのゲームのメインは稲作なので、これくらいの量感がちょうど良いなと感じた。

それでもやっぱり主人公のサクナヒメは魅力的だった。声優(ガブリールドロップアウトのサターニャ)の力量もあるのかもしれないが、サクナヒメが酷い目にあえばあうほど物語が面白くなっていった。なんだかんだで最初は駄目な神様だったサクナヒメが色々な経験を経て成長するのも良い。シンプルで骨太、素直に楽しめる物語だったから稲作とアクションにも気兼ねなく没頭することができた。こういうのでいいんだよこういうので。

売り切れ続出

このゲームは今は至るところで売り切れが続出しているらしい。もともと半インディーゲーであり、小さい開発形態だから想定販売本数もそこまで大きくなかったのに、なんの因果かネット上でバズリにバズったからだろう。リアルの知り合いにサクナヒメの話をすると、ゲームを少しでもプレイする人間は誰しもが知っているくらいだから驚きだ。

自分は某所で数年前から天穂のサクナヒメの開発配信を眺めていたので少し不思議な気分だ。一番不思議な気持ちでいるのは開発者当人だろうけれども。こういうのを見ていると、今の時代ってアングラで面白いものって存在しないのだろうなと思う。本当に面白いものであれば多かれ少なかれ広く共有され、すぐに拡散し、アングラではなくなるからだ。鬼滅の刃のアニメも同じだろう。アレももともとはジャンプ連載なので単にアングラとはみなせないけれども、社会の表の表舞台からみれば深夜アニメなんて相対的にはアングラである。

天穂のサクナヒメも狭いコミュニティで楽しまれるものだと思い込んでいたのに、それがメジャーなVtuberの配信やニュース、記事として取り上げられているから不思議に感じるのかもしれない。AmongUsやFallGuysも同じだったんだろうか。いずれにせよ、天穂のサクナヒメは本当に面白かったのでこれだけ広く認知されるようになった。バズっているからといって手を出さないのはもったいない。

それにしても良い体験をした。去年はデスストランディングで体調を崩したが今年は天穂のサクナヒメだった。1年に1本以上は寝食を忘れるほど没頭できるゲームがプレイできている。ありがたいことだ。ゲームのクリア時には開発者への感謝の念が湧いていた。もっといえば日常的に食べている米への態度も変わった気がする。すごいゲームだった。